2014年6月27日金曜日

経営革新等支援機関の認定を受けました

6月16日付けで、弁護士高野浩樹は、中小企業経営力強化支援法における経営革新等支援機関に認定されました。

経営革新等支援機関認定制度とは、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験を有する個人、法人、中小企業支援機関等を、国が経営革新等支援機関として認定することにより、経営分析や事業計画策定に係る中小企業による支援機関に対する相談プロセスの円滑化を図るものです。

詳細につきましては、以下のページをご参照ください。 

(関東経済産業局)
http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/chusho/kensaku/shienkikan_kensaku.html 
(中小企業庁)
http://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/


今後は、経営革新等支援機関として、より充実した中小企業向けリーガルサービスを提供してまいりたいと存じますので、何卒よろしくお願いいたします。

2014年6月24日火曜日

改正会社法の成立

20日、改正会社法が参議院で可決し、成立しました。施行は来年4月1日となる見通しです。

http://www.nikkei.com/article/DGKDASDC20005_Q4A620C1EA2000/

(法律案要綱、新旧対照条文等はこちらから)
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00151.html

改正箇所は多岐にわたりますので、重要なところを見ていきたいと思います。

1.社外取締役設置義務化の見送り

法制審議会では、コーポレート・ガバナンス強化の一環として社外取締役の設置を義務化する案も提案されましたが、経済界等からの反対論が根強く、結局義務化は見送られることになりました。

しかし、改正法では、一定の要件を満たす公開会社が社外取締役を選任しない場合は、株主総会で「社外取締役を置くことが相当でない理由」の説明や事業報告への記載が義務づけられます。
 社外取締役を「置かない理由」ではなく、「置くことが相当でない理由」の説明・記載が求められます。さらに、今後、会社法施行規則において、社外監査役が2名いることのみをもって「置くことが相当でない理由」とすることはできないとの規定が設けられる予定です。
したがって、今後、会社は、「置くことが相当でない理由」について積極的かつ説得的な説明・記載を行うことを要求されることになりますが、これはかなりハードルが高いと思われます。報道によると、法務省は、こうした厳しい説明・記載義務を設けることで、事実上社外取締役を義務づけるものと考えているようです。

なお、改正法の附則では、施行後2年を経過した後、社外取締役の選任状況その他の社会経済情勢の変化等を勘案した上で、必要があると認める場合には、社外取締役設置の義務付け等所要の措置を講ずることが明記されています。

 

2.監査等委員会設置会社の新設

社外取締役の導入を促すため、監査等委員会設置会社制度が新設されました。監査等委員会設置会社とは、監査役・監査役会が設置されない代わりに、3名以上(過半数は社外取締役)の「監査等委員である取締役」によって構成される監査等委員会が設置される会社です。

 

3.社外取締役の範囲の変更

社外取締役については、役員の2親等以内の親族や親会社の取締役や使用人が除外されることになりました。一方で、過去10年間当該会社または子会社の当該会社の業務執行取締役等を務めていない者は社外取締役になれることになりました。
多くの会社では、親会社の使用人(従業員)が取締役となっていますので、実務に与える影響が大きいと思われます。

社外取締役の範囲の変更は、改正法施行時に社外取締役がいる場合には、施行後最初に終了する事業年度に関する定時株主総会の終結の時から適用されることになります。
改正法の施行が平成27年4月である場合、3月決算の会社であれば、遅くとも平成28年6月の定時株主総会において、改正後の要件を満たす社外取締役を選任する必要があります。

 

4.多重代表訴訟制度の新設

多重代表訴訟制度とは、親会社の株主が子会社の役員の責任について株主代表訴訟ができる制度です。ただし、提訴できるのは親会社の議決権または発行済み株式の1%以上を所有する株主に限られる等非常に厳格な要件となっています。

2014年6月20日金曜日

専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法の成立見送り


今月19日の記事の追加情報です。

労働者派遣法改正案は、20日に廃案となり、次回国会であらためて法案提出されることになりました。


 http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS20022_Q4A620C1PP8000/


また、専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法は継続審議となりました。
http://h-takano.blogspot.jp/2014/03/blog-post_10.html



2014年6月19日木曜日

改正労働者派遣法の通常国会での成立が見送りに


労働者派遣法改正案が現在開会中の通常国会での成立が見送られ、秋の臨時国会に先送りになるようです。



http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20140619/565262/

先送りの要因となったのは、通常国会での審議が進まなかったことだ。引き金となったのは、厚労省が提出した改正労働者派遣法案にミスが判明したこと。罰則規定についての記載を、本来「懲役1年以下」とすべきところを誤って「懲役1年以上」としていた。これに対し野党が反発するなど、審議が停滞していた。

厚労省は、改めて秋の臨時国会での成立を目指す。条文の誤りは正したうえで、当初原案どおりでの審議に持ち込む考え。ただし、2015年4月の改正法施行については、「まったくの不透明。臨時国会での成立時期にもよる」(厚労省担当者)としている。
 リンク先の記事からは明確ではありませんが、審議未了により廃案とされ、臨時国会においてあらためて法案が提出されることになったのではないかと思われます。

国会で成立した労働法関連の重要法案は次のとおりです。

短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律
http://h-takano.blogspot.jp/2014/04/blog-post_30.html


労働安全衛生法の一部を改正する法律
本改正により、従業員50人以上の事業所は、年1回、従業員に対してストレスチェックを実施することが義務付けられることになりました(50人未満の事業所については努力義務となります。)。ストレスチェック義務は、労働安全衛生法上の義務ではありますが、従業員が使用者に対して安全配慮義務違反を主張する場合において重要な指標となることは確実です。
本改正については、後日あらためて記事にしたいと思います。

2014年6月11日水曜日

内閣府・消費者委員会:景表法への課徴金制度の導入のあり方に関する答申

10日、内閣府の消費者委員会は、景品表示法(景表法)への課徴金制度の導入のあり方について答申を行いました。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1003B_Q4A610C1CR8000/


答申(案)
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kachoukin/doc/140610_shiryou1.pdf

答申(案)の概要
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kachoukin/doc/140610_sankou1.pdf

それでは、今回の答申のポイントを見てみましょう。
 
1.対象行為
優良誤認表示・有利誤認表示・不実証広告に係る表示が対象となり、指定告示に係る表示は除外されています。ただし、不実証広告規制に係る表示については、合理的根拠資料の提出がなければ課徴金を賦課することができるとした上で、被処分者がその後の訴訟において合理的根拠資料を提出して不当表示でないことを立証することにより、賦課処分について争うことができるとする手続規定を設けるべきとしています。

2.主観的要素
不当表示がなされた場合には、原則として課徴金を賦課することとし、違反行為者から、不当表示を意図的に行ったものでなく、かつ、一定の注意義務を尽くしたことについて合理的な反証がなされた場合を、例外的に対象外とすれば足りるとしています。
要するに、事業者が故意・過失がないことを立証できなければ、不当表示があったことのみで課徴金が課されることになります。
この点、事業者側は、事業者に故意・重過失があることを要求すべきだとの主張をしていたのですが、今回の答申では容れられませんでした。
事業者にとっては、不当表示を発生させないことは当然ながら、故意がないこと(善意)かつ無過失を立証する方法を検討していくことが重要となります。無過失の立証とは、すなわち通常の注意義務を尽くしていたことを立証することですので、まずは不当表示を発生させないための体制の整備をしていることの証明が要求されることになります。

3.規模基準
課徴金制度を実効あらしめるためにも、執行の負担を考慮し、一定の裾切りは必要であるとしています。裾切りの基準額については、過去の措置命令事案も精査した上で、違反行為が消費者に与える影響と課徴金の賦課処分が与える事業者への影響等を勘案して適切な要件設定を検討する必要があるとしています。

4.課徴金額の算定
課徴金額は、事業者の得た不当な利得相当額を基準とし、一定の算定式により一律に算定すべきとしています。課徴金の金額については、過去に同様の制度が検討された際に「違反商品の売上額の3%」が提案されていましたが、これより大幅な引き上げを求める声も関係者から強く、消費者庁が今後、具体的な金額の算出方法を検討するとのことです。

被害回復との関係では、事業者が消費者への返金等の自主対応をした場合に課徴金額から一定額を控除する制度を採用するべきとしています。

消費者庁は、早ければ今秋の臨時国会に法案を提出する予定です。

2014年6月10日火曜日

改正景表法の成立と課徴金制度

今月6日、改正景品表示法(景表法)が成立しました。
ホテルなどで食材の偽装表示が相次いだ問題を受けて、消費者安全法等とあわせて改正がなされたものです。
改正景表法は年内に施行される予定です。

http://mainichi.jp/select/news/20140606k0000e010218000c.html


法律案概要 http://www.caa.go.jp/planning/pdf/140311-0.pdf
法律案・理由 http://www.caa.go.jp/planning/pdf/140311-2.pdf
新旧対照条文 http://www.caa.go.jp/planning/pdf/140311-3.pdf

景表法の改正の概要は次のとおりです。
1.行政の監視指導体制の強化
再発防止等を求める措置命令の権限は消費者庁のみに認められていましたが、都道府県にも認められることになりました(12条11項)。
また、消費者庁が農林水産省等の関係省庁に業者に対する調査・指導等を行う権限を委任することができるようになりました(12条3項)。

2.事業者の表示管理体制の強化
事業者の景品類の提供に関する事項および表示に関する事項を適切に管理するために必要な体制の整備その他必要な措置を講じる義務が明確化されました(7条1項)。

3.課徴金制度の導入に係る検討
政府は、景表法につき、この法律の施行後1年以内に、課徴金に係る制度の整備について検討を加え、必要な措置を講ずるものとするとの検討規定が盛り込まれました。

課徴金の導入については、現在、内閣府の専門委員会において議論が行われています。

景品表示法上の課徴金制度の導入等の違反行為に対する措置の在り方」に関する中間整理
http://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/kachoukin/doc/140401_chuukan.pdf

3月29日の記事でも書きましたが、不当表示であることの判断は現実には難しいことが多く、JAS法等の近接する法令や公正競争規約等を考慮しなければならないため、中小零細事業者にとっては負担が大きいものです。課徴金制度が厳格に運用にされるとしたら、大きな混乱が生じる可能が高いでしょう。

2014年6月4日水曜日

イオンのセブンイレブンに対する抗議

5月28日、イオンは「トップバリュに関するセブンーイレブン店舗での不適切な表示と当社の考え方について」と題するプレスリリースを出しました。


http://www.aeon.info/news/important/pdf/140528R_1_2.pdf

リリースの内容は、セブンイレブンのフランチャイズ店が、店舗内で掲示した販促物において「イ○ンのT○PVALUは原産国、生産者(国)がどういう訳かラベルに表示してありません。それに対してセブンプレミアムは生産者が明記してあります。しかもほとんどの商品が大手メーカー製です。安心してお買い求め下さい。」との表示があったことに対し、イオンがセブンイレブン側に抗議したというものです。

イオンは、抗議の理由として、「例示商品はすべて法律に基づく原産国表示の義務がないにもかかわらず、販促物表示の表現によれば、「セブンプレミアムの例示商品には原産国表示がある一方、トップバリュにはない。トップバリュには表示出来ない何らかの理由があるのではないか」との誤解をお客さまに与える恐れがある。」ことおよび「原材料の生産者の表示についても同様の誤解を招く恐れがある」ことを挙げています。

現行の制度上イオンの表示に問題はなく、セブンイレブン側の販促物表示は不当なものといえるでしょう。

ただ、本件の背景には、イオンのトップバリュのような原則として販売者名のみを表示して、製造者名を公表していないPBとこれを公表するPB間の競争の激化があることは明らかです。

4月17日の記事でもお伝えしましたが、消費者庁は加工食品の製造者名を原則として表示させる方針を明らかにしています。その背景には、消費者の「誰がどこで製造しているのか」という点についての関心が高まっていることが挙げられています。


 イオンも、こうした消費者のニーズは強く認識しているようで、リリースでは順次製造所所在地の都道府県名を表示するとしています。

マタニティハラスメントの相談件数増加について

近年問題となっているハラスメントの新しい類型としてマタニティハラスメントがあります。
マタニティハラスメントとは、妊娠・出産または育児休業を理由として従業員に嫌がらせや不利益取り扱いをすることをいいます。

5月30日に東京労働局雇用均等室で取り扱った相談の平成25年度統計が発表されました。

http://tokyo-roudoukyoku.jsite.mhlw.go.jp/var/rev0/0137/5363/201453018384.pdf

本統計によると、セクシュアルハラスメントに関する相談件数は、最も多く全体の36%ですが、平成22年度以降は大幅に減少しており、平成19年度と比較すると半分程度となっています。これに対し、マタニティハラスメント関係の相談件数は全体の19%とセクシュアルハラスメントに次いで多く、徐々に増大しています。

昨年の連合の調査では、マタニティハラスメントの内容としては、「妊娠中や産休明けに心ない言葉を言われた」ことが最も多く、次に多いのは「妊娠・出産がきっかけで、解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導等がされた」ことなっています。


企業はセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントに対しては労務管理の問題として理解し、就業規則についてもこれらを禁じる規定を置いたり、社内教育を実施する等の対策を取ってきました。
これに対し、マタニティハラスメントについては問題意識自体を有していない企業が多いと思われます。

今後、企業はマタニティハラスメントに関する問題が増加している現状を見こした人事政策を採る必要があるでしょう。