2014年1月30日木曜日

労働者派遣法の改正建議の公表


1月29日、労働政策審議会から労働者派遣制度の改正について建議が公表されました。

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000036085.html

 厚生労働省は、建議の内容を踏まえ、法案要綱を作成し、労働政策審議会に諮問すし、3月中旬までには法律案を本年の通常国会に提出する見込みとのことです。

 建議における大きな改正といえる部分は次のとおりです。

【特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別を撤廃】
 現在、特定労働者派遣事業は届出制、一般労働者派遣事業は許可制となっています。特定労働者派遣事業は派遣労働者の常時雇用が必要ですが、届出制のため一般労働者派遣事業よりも比較的容易に事業遂行が可能です。
 建議では、このような区別を撤廃して、全ての派遣事業者が許可を得ること、そして許可・更新を受ける際には、「キャリアアップ形成支援」を設けることを要件とすることを求めています。
  今回の改正が実現すると、特定労働者派遣事業者は、あらためて労働者派遣事業の許可を取得する必要があります。例えばIT業界では、特定労働者派遣事業として、SEのような技術者を常駐派遣していることが多く行われています。このような企業では、派遣事業としての形態を維持するか、それとも業務委託(請負)の形態に移行するかの選択を迫られることになるでしょう(後者では偽装請負といわれないように対策を施すことが必要となります。)。


【派遣期間制限の撤廃】
 現行法では、秘書や通訳といった「専門26業務」の派遣は、期間の制限がありませんが、それ以外の業務の派遣期間は原則1年、最長3年となっています。

 派遣期間について、建議では次の改正を提案しています。
  • 期間規制を緩和し、業種にかかわりなく、当該事業所の過半数労働組合等から意見聴取することを条件に、期間制限なく派遣を継続することができるようにする。
  • 同一の派遣労働者の派遣期間は3年を超えることはできないものとする。
  • 派遣先企業が労働組合等からの意見聴取をしないまま3年を超えて派遣労働者を受け入れた場合は、労働契約申込みみなし制度の対象とする。

 労働者派遣制度においては、労働者は派遣元と労働契約を締結した上で派遣先の指揮命令に服するという複雑な立場に置かれることになります。そのため、労働者派遣制度は、伝統的に、永続を前提としないテンポラリーなものであるべきであり、派遣労働者は正社員に代替するものであってはならないと考えられてきました。
 その一方で専門性のある26業種については、プロフェッショナルであるからには長期にわたって派遣労働者であることに耐えられるであろうとの認識から期間制限が設けられてこなかったものです。

 今回の建議では、①同一派遣労働者の期間制限、②労働組合等の意見聴取という常用代替防止のための制度は設けられているものの、企業が直接雇用の従業員を派遣労働者に置き換える動きは広まっていくでしょう。
 さらに、これまで期間制限のなかった26業種の派遣労働者(派遣労働者全体の40%程度を占めています。)は3年間の期間制限に服することになりますが、その処遇が大きな問題となります。

 本年の通常国会では、パートタイム労働法の改正も予定されており動向が注目されます。

2014年1月27日月曜日

みなし労働時間制:海外旅行添乗員の適用は不当・・最高裁

 海外旅行の添乗員が、労働時間算定が難しい場合に一定時間働いたことにする「みなし労働時間制」(労働基準法38条の2)の適用は不当として、残業代支払いを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷は、1月24日、添乗員側の主張を認め、会社側の上告を棄却しました。これにより、会社に対し約31万円の支払いを命じた2審・東京高裁判決が確定しました。
「みなし労働時間制」の適用可否について、最高裁が判断を示すのは初めてです。

http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=83887&hanreiKbn=02

 最高裁判決は、日程や業務内容はあらかじめ具体的に確定していること、添乗員に対しては携帯電話を持たせてツアー中も報告を求め、終了後に業務日報を提出させていることから、添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認めがたく、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」には当たらないとしています。


 携帯電話や電子メール等の通信手段の発達により、使用者は、事業場外の従業員の労働時間の把握が容易になっています。今回の最高裁判決は、こうした現状理解に基づき、携帯電話や添乗日報等によって労働時間の把握が可能であったことを理由にみなし労働時間制の適用を否定しています。
 今後の裁判においては、みなし労働時間制が認められる場合は非常に限定されてくることになると思われます。
 みなし労働時間制の導入時において合理的であったとしても、現時点においては合理性が失われている企業は多いのではないでしょうか。
 使用者は、安易なみなし労働時間制の利用は避けるべきですし、現在導入している場合はあらためて必要性を再検討するべきでしょう。 


2014年1月14日火曜日

明けましておめでとうございます

明けましておめでとうございます。

 昨年10月に九段アローズ法律事務所を開設しました。新年にあたり、気持ちを新たに、リーガルサービスの充実に努めてまいりますので、よろしくお願いいたします。


 本ブログでは最新の法律情報や日々の雑感を綴っていきたいと思います。
 お気楽にご覧ください。