2014年3月29日土曜日

「メニュー・料理等の食品表示にかかる景品表示法の考え方について」成案の公表


昨年以来の食品偽装事件を受けて、3月28日、消費者庁は、メニュー・料理等の食品表示にかかる景品表示法の考え方について」の成案を公表しました。

 http://www.caa.go.jp/representation/pdf/140328premiums_4.pdf


「考え方」は、表示が景表法の優良誤認表示(同法4条1項1号)に該当するかは、業界の慣行や事業者の認識ではなく、一般消費者が著しく優良と誤認するか否かの観点から判断されるとしています。
そして、客観的・科学的に実際のものが表示のものより上回ったか否かではなく、あくまで一般消費者が実際と異なる表示によって、実際のものよりも優良と認識され、誘引されるか否かによって判断されるとの基準を示しています。

具体的には、次のような表示は景表法問題となるとされています。

1.種類に関する表示
  • ブラックタイガーをクルマエビと表示
  • ブロイラーを地鶏と表示
  • ホイップクリーム(植物油を泡立てたもの)を生クリームと表示
  • スパークリングワインをシャンパンと表示
  • ランプフィッシュの卵の塩漬けをキャビアと表示
2.産地に関する表示
  • 実際には北海道産のエゾアワビを使用しているのに、房総地方の風景写真と共に房総アワビを使用していると表示
  • 中国産の栗をフランス産の栗と表示
3.製法に関する表示
  • 整形肉や牛脂注入加工肉を焼いた料理を焼いた料理を「ステーキ」として表示
  • 市販のパンを自家製パンと表示
  • 機械打ち麺を手打ち麺と表示
  • 紙パックのジュースをフレッシュジュースと表示
4.その他の品質に関わる表示
  • カマンベールチーズとそれ以外のチーズを使用しているにもかかわらず、カマンベールチーズとのみ表示

一方で、「考え方」は、「一般的な料理の名称として確立しているものであって、かつ、その食材がその料理に現に使われていることが社会的に定着している場合など、一般消費者が、その料理の選択において、それの食材の違いに通常影響されないと認められる場合」は、直ちに景表法上問題となるものではないとしています。

この例としては、合鴨肉を使用しているにもかかわらず「鴨南蛮」と表示する場合や「サケ弁当」、「サケおにぎり」等の材料として、一般に「さけ」、「サーモン」として販売されているもの(いわゆるニジマスを含む)が挙げられています。

 「考え方」は、一般消費者の判断を基準としながらも、公正競争規約JAS法も考慮したものとなっています。

上記の「さけ」、「サーモン」として販売されているものの範囲については、厚労省通知である「アレルギー物質を含む食品に関する表示について」を引用して「サケ科のサケ属、サルモ属に属するもの、陸封性を除いたもの」とされています。
アレルギーの問題としては、このような範囲が妥当であったとしても、消費者の立場からは、ニジマスがサケとして販売されることに違和感を持つ人が多いのではないでしょうか。


産地や種類について異なる表示が問題となるのは当然ですが、現実に事業者が自らのメニュー等を表示する際の判断は難しい場合が出てきそうです。
例えば、「考え方」では冷凍魚を鮮魚と表示すること自体は問題ないとしながらも、紙パックのジュースをフレッシュジュースと表示することは、JAS法等を根拠として問題としているのですが、消費者の立場からは一貫性がないように思われます。
また、中小零細事業者にとっては、JAS法等の近接する法令や公正競争規約等を考慮しなければならないことは負担が大きいといえましょう。

今後の運用が注視されます。

2014年3月12日水曜日

労働者派遣法改正案の国会提出

11日、労働者派遣法改正案が国会に提出されました。

概要 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-48.pdf
法律案要綱 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-49.pdf
法律案文・理由 http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-50.pdf

改正のポイントについては、以下の記事をご覧ください。
http://h-takano.blogspot.jp/2014/01/blog-post_30.html

内閣は、今国会での改正法を成立させ、来年4月からの施行を目指しているとのことです。

2014年3月10日月曜日

専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案の国会提出

3月7日に、「専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」が国会に提出されました。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/186.html

 先日の記事でもお伝えしましたが、専門知識等を有する有期雇用労働者について労働契約法による有期労働契約の無期転換ルールの特例を認めるものです。

概要
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-43.pdf

法律案要綱
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-44.pdf

 法律案案文・理由
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/186-45.pdf

法案では、無期転換権の特例は次のとおりとなっています。
  • 5年を超える一定の期間内に完了することが予定されている業務に就く高度専門的知識等を有する有期雇用労働者(第一種特定有期雇用労働者)について、当該業務に就く期間(上限10年)は無期転換申込権が発生しない(法案8条1項)。
  • 定年(60歳以上のものに限る。)後に有期契約で継続雇用される高齢者(第二種特定有期雇用労働者)について、定年後引き続き雇用される期間は無期転換申込権は発生しない(法案8条2項)。
事業主は、第一種特定有期雇用労働者および第二種特定有期雇用労働者についても、その特性に応じた雇用管理に関する措置についての計画を厚生労働大臣に提出した上で、認定を受けることが必要となります。

今回の立法は、一般の企業にとって定年後に引き続き雇用する高齢者について上限なく有期労働契約を更新していくことが可能となったことが大きいところです。無期転換権の発生が5年であることを前提として第2定年を設定している企業などは、法案成立に備えた対応を検討することになるでしょう。

2014年3月3日月曜日

ドワンゴ就職受験料、厚労省が中止求め行政指導

就職希望者から「就職受験料」を徴収したドワンゴに対し、厚労省が中止を求める行政指導を行ったことが報じられています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140302-00000197-yom-sci

・・・ドワンゴは、インターネットで応募手続きが簡単になり就職希望者が殺到しているため、「本気で働きたい人に絞り込む」目的で受験料制度を導入した。受験料は、運営する「ニコニコ動画」の語呂合わせなどで2525円に設定。交通費などが多くかかる地方在住者は免除し、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県の学生に限って徴収するという。

同社などによると、行政指導があったのは2月中旬。厚労省は「受験料制度が他社にも広がれば、お金がない学生の就職活動が制約される恐れがある」として 問題視。来春卒業予定者の採用では、既に手続きのピークを過ぎているとして事実上、不問にしたが、16年春卒の採用からは徴収しないよう求めたという。

 労働者の募集に関し、職安法は「いかなる名義でも報酬を受けてはならない」と規定。厚労省は指導の中で、ドワンゴの受験料が「報酬」にあたるかどうかは明確に判断しなかったといい、同社の担当者は「受験料は報酬にはあたらない」との認識を示している。
 
職業安定法第39条(報酬受領の禁止)は、「労働者の募集を行う者及び第三十六条第一項又は第三項の規定により労働者の募集に従事する者(以下「募集受託者」という。)は、募集に応じた労働者から、その募集に関し、いかなる名義でも、報酬を受けてはならない。」と規定しています。
ところが、厚生労働省による「労働者募集業務取扱要項」には、職業安定法第39条の解説として、次の記載があります。
なお、募集とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人をして労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することであり、採用試験は募集に応じた者から雇用することとなる者を選考するために行うものであるため、募集とは別の行為である。このため、採用試験の手数料を徴収することは法第39条の報酬受領の禁止には該当しない。
このように、厚労省の行政解釈においては、「採用試験の手数料」は「報酬」に該当しないことになります。
この「採用試験の手数料」とは、もともと応募者多数のため試験会場を借りなければならない場合の賃借料等の実費について、その一部を応募者に負担させることを認める趣旨であると思われます。

それでは、ドワンゴの「受験料」は「試験の手数料」といえるのでしょうか。

ドワンゴのサイトによると、「受験料」は2,525円とさほど高額ではありませんが、「本気で当社で働きたいと思っているかたに受験していただきたい」ことを目的としていることや受験料は全額寄付するとしています。

今回の行政指導において、厚労省は報酬該当性について明確に判断しなかったのですが、上記のようなドワンゴ自身が表明している「受験料」の捉え方からは、一義的に「採用試験の手数料」と解することも難しいのではないかと思われます。

いずれにしても、厚生労働省は、企業が採用時に求職者から金銭を徴求する風潮が広まることを懸念していることが窺えますので、企業の採用活動においては慎重な対応が必要でしょう。

(追記)
3月3日にドワンゴからプレスリリースがありました。
「報酬」該当性については厚労省内でも意見が分かれているようですが、企業が採用時に求職者から金銭を徴求する風潮が広まることを非常に危惧しているとのことです。
今後「就職受験料」が広まる場合は厚労省からアクションがなされる可能性が高いでしょう。